電子帳簿等保存制度の見直し(2021年3月31日公布、2022年1月1日施行)について、法改正のポイントを解説します。企業がペーパーレス化を進めるにあたり壁となっていたルールが見直されました。国税庁のQ&Aを参考に簡単に内容をまとめています。
電子帳簿等保存に関する改正事項
「電子帳簿保存」の区分は、自社のパソコンを使って作成した帳簿(仕訳帳、総勘定元帳、経費帳、売上帳、仕入帳など)の電子保存の事を指しています。
1. 税務署長の事前承認制度は廃止
以前、企業がペーパレス化を進めるためには、事前に必要な申請があることを記事で取り上げました。法改正によって2022年1月から規制が緩和され、これらの面倒な申請と承認作業が不要になります。
(事前承認制度に関する記事はこちら↓)
クラウド会計ソフトを使い、証憑を適切に電子保存していても、事前に申請をして税務署長の承認を得ていなければなりませんでした。今回の法改正によってこの承認制度が廃止になります。
2022年1月1日以降は、必要とされるスキャナーや会計ソフトなどの機材やツールを揃えて基準を満たせば、すぐに電子帳簿保存を開始できるようになります。
2. 過少申告加算税の軽減措置
優良な電子帳簿に記録された事項に関し申告漏れがあった場合には、その申告漏れに課される過少申告加算税が5%軽減されることになりました。(隠ぺい・仮装の事実があれば軽減はなし)
3. 最低限の要件を満たす電子帳簿についても、電磁的記録による保存等が可能
複式簿記であること、帳簿システムの操作説明書があること、速やかに印刷・出力・ダウンロードできるなどを満たしていれば(最低限の要件を満たす電子帳簿)保存・管理が認めれるようになりました。
スキャナ保存に関する改正事項
「スキャナ保存」の区分は、取引相手から受け取った 契約書・見積書・注文書・納品書・検収書・請求書・領収書などの書類をスキャナで読み取り、電子データの形式で保存する事を指しています。
以下は、2022年1月1日以降に行うスキャナ保存について適用されます。
1. 税務署長の事前承認制度は廃止
電子帳簿保存の区分と同じように、事前に申請して承認を受ける必要はなくなります。
2. タイムスタンプ要件の緩和
担当者が書類をスキャナーで読み取った際の「署名」が不要になります。タイムスタンプ付与の期間が「最長2ヶ月」へ延長されます。
電子データの修正や削除のログが残るシステムを使う場合、タイムスタンプ付与自体が不要となってクラウド上での保存も認められるようになります。
3. 検索要件の緩和
電子データ検索機能の必須項目が「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3つに削減されます。また、税務署からの電子データのダウンロード要請に対応できるようにしている場合には、「範囲指定」や「項目の組み合わせ」に関する機能は不要になります。
4. 適正事務処理要件は廃止
「適正事務処理要件」とは、相互けん制、定期的な検査及び再発防止策の社内規程整備等のことをいいます。 これまでは2人以上でチェック機能を持たせたり、定期検査をするまで紙を保存する必要がありました。
この適正事務処理要件が廃止されたことで、定期検査まで紙の原本を保存する必要はなくなります。また、事務処理担当者が1名でも問題ありません。
電子取引に関する改正事項
「 電子取引 」はメールや Web などインターネットなどを利用した取引を指しています。受発注・出荷・請求・支払などの各種取引を通信回線を通じて、企業間でやり取りする電子商取引データのことです。
1. タイムスタンプ要件及び検索要件の緩和
スキャナ保存と同様、 タイムスタンプの付与期間が、記録事項の入力期間と同様、最長約2か月と概ね7営業日以内とされました。
電子データ検索機能の必須項目が「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3つに削減されます。また、税務署からの電子データのダウンロード要請に対応できるようにしている場合には、「範囲指定」や「項目の組み合わせ」に関する機能は不要 。
※売上が1,000万円以下で 税務署からのダウンロード要請に対応できる場合は、上記3項目による検索機能も不要。
不正に対するペナルティ強化措置
スキャナーで読み取った電子データや電子取引の電子データを改ざん、隠蔽などして税を逃れるために不正な申告をした場合、通常の重加算税に10%が加算されます。
以上、法改正のポイントをまとめてみました。
今回改正された電子帳簿保存法は、コロナ禍でリモート経理を実現するには、絶好の追い風になるでしょう。ハードルの下がった電子帳簿保存法に対応するために、今から2022年1月1日の施行に向けて準備していきましょう。
※詳しくは、国税庁が改正内容を分かりやすくまとめています。(PDF4枚)
気になるQ&Aなども紹介されていますので、ぜひご参考ください。