電子帳簿保存法に対応するために必要な申請3つ【企業のペーパーレス化に向けた基礎知識】

ペーパーレス化というと、紙ではなく電子データで保存しておく事だと考えている方が多いかもしれません。

しかし実際には、企業の文書保存をペーパーレス化してゆくためには、法律や制度などのルールを知っておく必要があります。

例えば、企業のお金や物の動きに関する情報(財産・会計の情報)を電子データで管理していくことを考えた場合には必要な申請手続きがあります。

法で定められた納税を適切に行えるよう、電子帳簿保存法に対応した環境(電子帳簿ソフト)が必要であり、国税庁が定めた制度の適用を受けるための承認が必要です。

そこで、会社設立と同時にペーパーレス化を進めている当社が、税務署の担当者と直接会って確認した内容をまとめてみました。

追記: 改正電子帳簿保存法が2021年3月31日に公布され、2022年1月1日に施行される予定です。2022年1月1日から、以下で説明しているような税務署による事前承認制度は廃止になります。

3つの申請:帳簿・書類・スキャナ保存

ペーパーレス化をするメリットは様々ありますが、何を対象に電子化・ペーパーレスで管理したいのかによって、大きく3つの申請に分けられます。

【その1】帳簿(仕訳帳、総勘定元帳、経費帳など)

パソコンの会計ソフトを使って管理している企業は多いと思います。

一般的には経理担当者が会計ソフトに仕分けデータ入力し、税理士や会計士の管理下で決算書を作成するなど、必要な会計業務を行っているはずです。それらの納税に関わる情報は、文書保存・ファイル管理を行い、定められた期間いつでも照会できるように保存しておかなければなりません。

このように、国税関係帳簿・書類の保存について企業がペーパーレス化を進め、電子データで保存していくことを法的に認めてもらうためには、税務署長の事前承認が必要になっています。

文書保存の負担軽減を図る観点から、各税法で保存が義務づけられている帳簿書類は、一定の要件の下で、プリントアウトせずに、作成した電子データのまま保存することができます。この制度の適用を受けるためには、税務署長の事前承認が必要です。

引用:国税庁ホームページ 電子帳簿保存法

国税関係【帳簿】の保存をペーパーレス化したい場合、必要な申請はこちらです。

国税関係帳簿の電磁的記録による保存等の承認申請書

自社のパソコンを使って作成した帳簿(仕訳帳、総勘定元帳、経費帳、売上帳、仕入帳など)の電子保存を認めてもらうための申請です。

帳簿全部でなくとも申請可能です。電子データで管理する対象を指定して申請すれば、帳簿のうち一部のみを電子データで保存する事が認められます。

例)仕訳帳と総勘定元帳を電子データで保存するように申請を行い、他の帳簿は紙で保存するなど。

【その2】書類(損益計算書、見積書、請求書、領収書など)

次に、決算関係の書類(損益計算書、貸借対照表など)や、自社が取引先に対して交付する書類(見積書、注文書、申込書、契約書、請求書、領収書等)の控えを電子保存したい場合に必要な申請があります。

国税関係書類の電磁的記録等による保存の承認申請

この申請のポイントは「自己(自社)で発行した書類」の電子データ保存を認めてもらうための申請であることです。例えば、自社が発行した請求書は承認の対象範囲内ですが、相手から受け取った請求書は承認の対象外です。

【その3】スキャナ保存(受け取った書類など)

取引相手から受け取った 契約書・見積書・注文書・納品書・検収書・請求書・領収書などの書類は、紙のままではなく、スキャナで読み取った電子データの形式で保存することができます。そのために必要な申請はこちらです。

国税関係書類の電磁的記録によるスキャナ保存の承認申請

取引相手から受け取った請求書などの国税関係書類を、紙で保管するのではなくスキャナ保存していくことを認めてもらいたい場合の申請です。

一定の要件(解像度や色調)を満たしていれば、スキャナ、スマートフォン、デジカメで撮影したデータを保存し、紙で保存する必要がなくなります。

申請期限について

申請はいつでもできますが、保存を開始する日の3ヶ月前の日までに上記の承認申請書を提出する必要があります。電子データの保存の適用を受けたいなら、3ヶ月前に申請を済ませておいてねということです。

特例として、会社を設立してから3ヶ月以内(3ヶ月経過する前)に申請をすれば、設立当初から電子データによる保存・管理が認められます。
(承認された帳簿・書類の種類の範囲内で)

ちなみに以下の文章は「記載要領」に書かれた「申請期限」に関する原文ですが、非常に分かりにくいです。

承認を受けようとする書類の電磁的記録の保存をもって書類の保存に代える日(承認を受けようとする書類が2つ以上ある場合で、その代える日が異なるときは、最初に到来する代える日)の3月前の日までに、所轄税務署長に提出してください。

なお、新設法人が承認を受けようとする場合、設立の日から6月を経過する日までの間に書類の保存開始日が到来するものであるときは、その設立の日以後3月を経過する日までに提出してください。

また、新たに業務する個人が承認を受けようとする場合、その業務の開始の日から5月を経過する日までの間に書類の保存開始日が到来するものであるときは、その業務の開始日以後2月を経過する日までに提出してください。

「国税関係書類の電磁的記録によるスキャナ保存の承認申請書」の記載要領 1.申請期限

個人事業主の場合は、開業日から2ヶ月以内(2ヶ月が経過する前の日まで)に申請すれば設立当初から電子データによる保存・管理が認めれるということでしょうね。

添付書類について

3つの申請についてご紹介しましたが、いずれも【添付書類】が必要になっています。

添付書類とは、電子保存のために導入するシステムの概要、操作説明書等、事務手続の概要などを示すために提出するものです。導入するシステムや処理方法が、国税庁の調査に必要な要件を満たしているかどうかを確認するためのものです。

JIIMA(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会)が認証するソフトウェアを使用する場合は、承認申請書の記載欄を省略した簡素な様式の申請書で申請することができ、操作説明書等の添付が不要になります。

申請方法について

申請方法は、いくつかあります。

  1. 申請書をプリントして記入・捺印し、直接税務署へ提出する方法
  2. e-taxを使って申請する方法
  3. 税理士に依頼して申請を代行してもらう方法

2.の方法の場合、e-taxの使い方は税務署でなはく「e-taxのヘルプデスク:0570-01-5901」へ問い合わせるように案内されました。しかし、このヘルプデスクの番号は混雑していて繋がらない状況が続いたため、当社は3.の方法で申請をしました。

申請不要な取引

以下のように承認申請が不要な取引もあります。(電子帳簿保存法第10条)

インタネット取引データ

メールや Web などインターネットなどを利用した電子取引

EDIデータ

EDIとは、電子データ交換(Electronic Data Interchange)の略語です。 受発注・出荷・請求・支払などの各種取引データを通信回線を通じて、企業間でやり取りする電子商取引データのことです。

税務署への申請、税務署長の承認は不要ですが、電子取引の情報について保存義務が規定されています。規定期間は廃棄してはいけませんので注意が必要です。

追記:改正電子帳簿保存法 ( 2022年1月1日施行 )による緩和

2020年12月21日、閣議決定において「令和3年度税制改正の大綱」が定められました。その中に、国税関係の書類を電子データの方法で保存するための要件を定めた「電子帳簿保存法」について大きな改正点が盛り込まれています。

今回の法改正により税務署による事前承認制度が廃止されます。改正法の施行後は、必要とされるスキャナーや会計ソフトなどの機材やツールを揃えて基準を満たせば、すぐに電子帳簿保存を開始できるようになります。

今回の改正電子帳簿保存法は2021年3月31日に公布され、2022年1月1日に施行されます。これにより、電子帳簿の保存要件が現行よりも大幅に緩和されるため、多くの企業にとって利用しやすくなるでしょう。

ペーパーレス化に必要な申請まとめ

  • ペーパーレス化していきたい対象によって申請書が分かれる
  • 承認申請は適用を受けたい日の3ヶ月前までに
  • 会社設立から3ヶ月経過する前に申請すれば、設立当初から電子保存可。(個人事業主なら、開業から2ヶ月経過する前に申請すれば)
  • システムの概要・操作方法等を示す添付書類が必要だが、JIIMAが認証するソフトを使うなら簡素な様式の申請書が別途用意されている
  • 電子取引について電子データ保存の申請は必要なし
  • 2022年1月1日よりこれらの事前承認制度は廃止になる(事前申請は不要)

電子帳簿保存法の改正によって、企業のペーパーレス化が加速しそうですね。法改正によってルールがどのように変わったのか?詳しくは以下の記事をご参照ください。

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